2009年08月29日

質問お答え その3

質問にお答え企画、2009年夏の第三弾です。
答えは「続きを読む」からどうぞ。


Q.先生の「オススメ幻想文学」を教えていただきたいです。あるいは、オススメの本を!(質問者:卯月 朔 さん)


質問受付は、2009/8/31までです。
何かありましたら、下記記事のコメント欄からどうぞ。

http://paperarchitecture.seesaa.net/article/125269001.html


A.どの辺りをご紹介しようかなあと大分悩んだんですが、「幻想文学が好きなひとにとっては超メジャー、でもそうじゃないとあまり読まないかも」のラインで行ってみようかと思います。
正直幻想ものを読み慣れていないとつらいものもありますが、なんというかそういう機会だと思ってくだされば幸いです。

なお、ご紹介は諸事情により海外の作家さんに限らせていただきますね。
国内のものにつきましては、ご自分で色々探してみてくださいませ。
記事の画像はアマゾン・アフェリエイトですのでお気をつけ下さい。


■恋愛小説方面で幻想
『うたかたの日々』ボリス・ヴィアン



なんとなーくタイトルくらいは聞いたことがある、という方も多いんじゃないでしょうか。かなり有名なフランス産恋愛小説です。
そう、基本的な分類は幻想小説じゃなくて、恋愛小説なんですよ。
でもそう思って読み始めると、幻想耐性がない方は読み切れないかもしれない。
それくらいおそろしく自由な筆で描かれた幻想の物語でもあります。

舞台はフランスのパリ、主人公は朗らかな青年コラン、そしてヒロインは可憐な美少女、クロエ。物語は二人とその友人たちの恋と愛とその終わりを語るものなんですが、作品世界はいっそグロテスクなほどに美しく歪つです。
浮かれた気分になれば空からはピンクの雲が降りてくるし、美少女は肺に睡蓮が咲く病気にかかるし、主人公が絶望すれば部屋はどんどん狭くなる。
なにそれ、わけがわかんない! と一言言っちゃうと全部終わっちゃうんですが、乗り物酔いみたいなものを感じながら読み切ったときには、これは確かに恋愛だ! と、思える……かもしれません。
恋愛にまつわる感情そのものを歌い上げるためにすべての世界が存在している、そんな世界観を知的で軽快な筆で表現した物語です。



■元祖・ファンタジー方面で幻想
『ファンタステス 成年男女のための妖精物語』ジョージ・マクドナルド



子供向け小説もものすごく幻想的で面白いジョージ・マクドナルド。
今作は大人向けで、かつ凄まじく美しい視覚的喜びにあふれたファンタジー作品です。
ファンタジーは幻想文学なのか、という問題はもちろんあります。マクドナルドは文章表現はあまり評価されていないらしいという事実もふまえてちょっと悩むところではあるんですが、まあこの記事は単に私のお薦め記事なので入れてしまいます。

えーっと、とりあえず、主人公が妖精の国をさまよう話です。
終わり。
……。
や、そのさまよいっぷりが素晴らしいのです!
夢のように連なる妖精の国の表現、そこへ入り込んでいくところも本当に素晴らしくて、頼み込んで爪の垢を煎じて飲みたいです。
そう、マクドナルドは夢の描写が凄い、というか個人的に好きでもあるのです。
夢って独特の雰囲気があるじゃないですか。
生々しいようで、虚ろで。変に明るくとんでもないことが起こったり。どこか思い返すとぞっとするようなうっとりするような……その肌感覚が、彼の小説を読んでいる間中つきまとうのです。
あとは乾いた死の影とでもいいましょうか。
美しい中にどうも死の匂いがするんですが、それがとても乾いた、軽やかな死なのですね。そんなところも大好きです。

……で、ここまで勧めておいてなんなんのですが、アマゾンさんを見るに……絶版……かな……(がっくり)。
リリスよりは大分日本人向けだと思うんですが……マイナーだからかー。



■芸術方面で幻想
『香水 ある人殺しの物語』パトリック・ジュースキント




さて、これが多分幻想的には一番ハードルが低い一品です。
というかやや幻想と違う気もするんですが、世界幻想文学大賞受賞作品らしいのできっと幻想小説です。

本作の舞台は18世紀フランス。
しかし最初にスポットが当たるのは町の腐臭です。臭いで人が気絶するレベルで不衛生なパリの町に生まれた主人公は、奇跡的な嗅覚を持つ代わりに、人間らしい愛や心を一切持たない人間でした。
彼は究極の香水を作るため、どこまでも暴走していきます。その姿は狂っているようでもあり、一種の芸術家のようでもある。
彼は匂いを追い続けた先に、一体何を見るのでしょうか。

……と、普通にあらすじ紹介できる時点で、物語がちゃんとしてるんですよ。
匂いが立ち上ってくるような描写(悪臭含む)とか、モラルゼロの主人公とかが大丈夫でしたら、結構な確率で面白く読めると思います。よくできた物語です。
実際これは売れています。うん、そういうもんですね!
少女向けファンタジーでは絶対描けないであろう、汚い18世紀パリなどの描写も含めて大変面白いです、オススメです。

これ、映画も素晴らしい出来なんですよ。原作とは主人公の心の流れが違うんですが、より映画という表現方法にふさわしく、観客に共感を呼びやすいテーマを表現しています。原作とは違う着地なのに原作を損なっていない、本当に凄い映画です。機会があればこちらもどうぞ。



他に低価格版もあるみたいです。

posted by 栗原 at 13:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 近況 | 更新情報をチェックする
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